久しぶりの現場レポート。今回は17年使い込み、傷んでいた「木のキッチン」の更新、再生プロジェクト。新建材も多い中、無垢チーク集成材という自然素材のキッチンを中心とした改修事例です。最新の設備機器や、キッチン周りの詳細情報について載せていこうと思います。

リビングに開けたキッチンは全長4mの大きさで、幅90cmのシンク、4口ガスコンロを備えつつ、簡易的なレンジフードやオープン収納棚の構成。初めのリノベーション当時、木部の仕上塗料はご自身で施工され、思い入れのあるキッチンでしたが、少々間違ったケアにより汚れが溜まってしまっていました。この木部の再生に伴い、最新の設備機器を導入したり長年キッチンに立ち感じた使い勝手をもとに収納を細かく計画し直したりと工事箇所を決めていきました。


まずは木部補修のご紹介。表面に汚れが溜まっていたカウンタートップを研磨し、オスモのカウンタートップオイルを塗布。木部が呼吸をしながら撥水性を発揮する塗料で、2回塗布しています。このような補修は、どの部分で手を止めるかで費用も変わってくるので、今回は特に汚れの目立つトップのみを研磨+塗装。見事に瑞々しい表情になりましたね。

続いて設備機器。シンクはトヨウラ社製の特注品。カウンター開口、トラップ位置はそのままに、正確な採寸と製作寸法の精密さでアンダーシンクのみ交換で成立しています。天板開口のR形状を合わせたり、エッジを出来るだけシャープにしたりという全体のバランスを大事にしながら、下部にリブを設け予洗いがしやすい形状に、またステンレスは汚れが目立ちにくいバイブレーション仕上げとしています。

コンロはリンナイのG:LINE。既存開口に適合する組み合わせとし、1口ハイパワーのガスコンロと、2口IHに変更。IH不使用時は一時的な鍋置きとして使えるようにレイアウトしています。IHは200Vが必要なので、今回のために電気配線も実施しており、新たに設けたオーブンにも専用で配線工事をしています。

レンジフードはアリアフィーナのセンターフェデリカを採用し、デザイン性に優れた高機能なフードです。通常天井から下ろす形で接続するダクト、今回は背面から貫通させて接続..工務店さんの精密な加工により実現しています。

既存収納部を活用し、電気ウォーターオーブンを導入。お施主様によると使いこなすのに少々時間がかかりそうとのことですが、調理機能のアップグレードで食事の楽しみが増し増しだそうです。

最後に収納パートです。まずはキッチンから。常温保存の食品スペースや、お鍋、フライパン、まな板の引き出し収納は機構に注目。鍋蓋を立てかける受け棒があったり、引き出しのレールシステムはブルム社製とハーフェレ社のグラスなどを使い分け。今回工事をご協力いただいた家具会社クレドさんはキッチンに特化しており、細かい金物含め豊富なご提案をいただきました。

冷蔵庫横のパントリー。お施主様が収納用途を明確にし、家具会社さんと弊社で厳密に寸法を確定することで、実現しました。開いた2枚折戸が動線と被るという生活上の問題を、既存レールを生かしながら3枚扉にすることで解決し、暮らしやすい生活動線のアップデート。


玄関収納は空間のバランスと、お施主様の家具と調和するように素材、色艶を確定。玄関周りに使用するものの使い勝手を考慮して備え付けました。突板ロールも事前に確認し、チーク柾目の突板選定、染色+ウレタン塗装しています。

このように箇所ごとに更新する改修工事において、特に検討が必要なのが電気やガスの設備関係の工事。今回はIHコンロ・オーブンのために専用回路を増設しているのですが、既存壁・床内部を簡単に配線できるわけではありません。案の定、今回は廊下で露出部分がでてきてしまうことが判明。しかし設備系統を更新する代償として安易に容認するのではなく、R壁を作り既存仕上げを合わせることで空間を進化させることで、馴染ませました。柔らかく光が回り込み空間を包んでくれています。

最後は再びキッチンへ戻ります。天板下に引き出し等も設けると共に、バックパネルも今回工事で固定しています。そのおかげで前まで荷物置き場だった場所が、椅子を並べて大人数でも集まれる仕様に...!

キッチン他、部分的な空間の変化をご紹介してまいりました。使用した機器等の品番は最後にもまとめておりますので参考にしてみてください。
部品交換による全体の更新が、単なる足し算よりも優れている状態でお引き渡しできたのではないでしょうか。
今の時代なかなか「木のキッチン」を見ることがない中、お世話をする、お手入れをする、そのように暮らしに主体的に関わるような慈しみのある生活空間を拝見すると、単なる「汚れが目立たない仕様で!!」という判断に深みの与える選択肢となりうるかもしれませんね。本物の木の温もり、他の素材では得難い感覚をご紹介することができたのではないかなと思います。「料理、家事、収納が楽しくなった!」お施主様にご満足いただけたようで、弊社としても嬉しい限りです。
塗料:オスモ/カウンタートップオイル
シンク:トヨウラ/SUS特注製作 VB仕上
IHコンロ:リンナイ/RHKD321GM1T(A)
1口ガスコンロ:リンナイ/RHD312GM1R
オーブン:リンナイ/RKO-M31E
レンジフード:アリアフィーナ/CFEDL-952 S
設計監理:TATO DESIGN
施工管理:礎コラム
家具製作:CREDO
< 撮影・書き手: 大山、櫻井(TATO DESIGN) >